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寺宝「酒茶論」

「酒茶論」当院の寺宝である掛け軸。 酒と茶どちらが優れているか競い合う二人に後から来た老人が「どちらも水が無いと出来ないのに何を争うことがある。茶には茶の良さ、酒には酒の良さがある。それでいいではないか」と諭す内容が二千余字で書かれた文字だけの軸物です。 「請う、其の本を務めよ」これは妙心寺の開山無相大師のご遺誡(ゆいかい)で最も大切なお言葉ですが、当院にある酒茶論が説いていることも形は違えど根本は同じことを説いています。自分をしっかりと見つめ成すべきことの根本を全うする。世情や妄言に左右されることなく自分に責任をもって貫くことが誠の人であるという内容にどちらも相違ありません。 昨今の日本はどうでしょう。目先の利益追求に走り、その行いを正当化するため出来得る限りの着飾った言葉で誤魔化そうとする。そしてその言葉を盲目的に信用し、自分で物事を見つめようとしない人間は、自分のした行いに決して責任を取ろうとしない。 楽なこと、苦労の無い道を求める欲が世間全体を取り巻いてはいないでしょうか。人間とは欲深い生き物です。しかしその欲無しでは我々も生きていけません。生きたいということも欲であるのですから。欲を無尽蔵に欲することがいけないことなのです。 足るを知ることの大切さ、足りすぎたモノと行き過ぎたサービスのはびこる今の世の中で、一人一人が本当に必要なモノを見分け、己で出来ることは人に頼らない、当たり前のことを一人一人が心がけることこそ大切であると故事は教えてくれます。


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